【レビュー】『ドラゴンクエストモンスターズ3』はなぜ低評価なのか

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ドラゴンクエストモンスターズシリーズ25周年。
そんな節目の年に発売された記念すべきシリーズ最新作、それが『ドラゴンクエストモンスターズ3』です。

私は初代ドラクエモンスターズのみプレイ済で、他作品はプレイしたことがないのですが、それでも新作が出ると聞いてからずっと、発売を楽しみにしていました。

が、いざ発売されてみればユーザーの評判は芳しくなく、とても25周年を記念する作品とは思えない評価を下されてしまいます。

そんな情報もあって見送っていたのですが、やはり自分自身で体験するべきだと思い購入。
つい先日追加ストーリーも含めてクリアしました。

結論から言うと面白かったですが、それ以上に残念な点が目立つ作品でした。
世間の評価と概ね同じです。

今回は私の感じた「残念な点」について話しつつ、どうして欲しかったのかを考えていきたいと思います。

ドラクエモンスターズについて

『ドラクエモンスターズ』は1998年に発売された『テリーのワンダーランド』から始まる人気シリーズで、モンスターを仲間にして育て、自分だけのパーティで物語を進めていくRPGです。

その面白さに大きく貢献しているのが、2匹のモンスターをかけ合わせて新たなモンスターを作る「配合」システム
「今度はどんなモンスターが生まれるんだろう!」という期待感に胸を躍らせ、やめ時がわからずプレイし続けてしまった方も多いのではないでしょうか。
あのワクワクは、間違いなくこのシリーズならではの楽しさです。

今作も、モンスターズシリーズのこの根幹のシステムについては、文句なしに面白かったです。
テリーのワンダーランドをプレイした時に感じた昂揚感と同じものをまた味わうことができました。

では何が残念だったか。
それ以外のほとんどの要素です。

細かいことを挙げればきりがないので、大きく3つの要素について話していきます。

ストーリーテリングがお粗末すぎる

なんといってもこれ。
批判的なレビューを見ると、ほとんどすべてにストーリーについての不満が書かれています。

ただ、個人的にはシナリオは特別悪くなかったです。
全体の流れでいえば、主人公のピサロが親父に復讐する物語で、その動機や旅の途中で出会う仲間たちとの関係も含め良かったと思います。
『ドラクエ4』という下地があるからと言えばそれまでですが…。

悪いのは演出。
描き方がとにかく悪い。というかわかりづらい。

まず冒頭。
ピサロがモンスターマスターになるまでの過程を説明しなければいけないのはわかりますが、あまりにも駆け足すぎる。
そのせいで、感情移入がまったくできません。

村で見知らぬ少年と仲良くなったと思ったら、

すぐ次のシーンで親父が殺されます。即落ち2コマ。

「これまでのあらすじ」みたいなテンポで、初見の話が展開していきます。

展開が速すぎてキャラクターの感情についていけないので、もう他人事のように「ああ、そうなのね」と思うしかない。
この「ついていけなさ」が全編通して続きます。

言ってみればプロットをそのまま読んでいるみたいな感覚で、設定だけが淡々と頭に入ってくる感じ。
だから自分の体験として感じられず、客観的にしか見れない。

かの有名なコメディアン、チャールズ・チャップリンは「人生は近くで見れば悲劇だが遠くから見れば喜劇だ」という言葉を残しました。

彼の意図とは少しずれた解釈になりますが、物語も同じで、当事者にとってはどんなに深刻な場面であっても、第三者からみればとんだ茶番のように見えることもあるわけです。

だからこそ、キャラクターの心情を描きたいのであれば、きちんと読み手を感情移入させ、当事者として物語に没入させないといけないと、私は思います。

「親友の父が殺された」というのは本来プレイヤーの胸を打つ展開ですが、急すぎて茶番のように見えてしまいました。

特に今作は発売前からストーリーを重視したプロモーションをしていたにもかかわらず、この結果。
物語を見せたいなら、もう少し丁寧に描いて欲しかった…。シンプルに悲しいです。

キャラクターの扱いが雑すぎる

上述した話と関係しますが、登場人物の扱いが雑すぎる。
例えばチュートリアルを担当してくれたアゲぴぴ

モンスターマスターになったばかりの主人公(プレイヤー)に対していろんなことを教えてくれた彼女ですが、その後は通信時に話しかけるだけのシステムキャラと化して、ストーリーには一切絡まない。

癖強めのキャラにしておきながらこの扱いはなんなんでしょうか。
いろいろとかみ合ってなさすぎる。

一方で、いろんな魔界に行って問題を解決するというストーリー上、その都度新キャラが出てくるので、ぽっと出の新キャラが多くてしょうがない。
一つ一つの話も短いので、各キャラへの愛着も薄くなります。

いろんな魔物をまとめ上げていく様を描きたかったのだとは思うのですが、それにしても多すぎて「また同じようなやつが来たな…」くらいにしか感じなくなっていく。

極めつけは、ロザリーベネット
メインキャラでありながら、彼女らの存在があまりにも薄い。特にベネット。

ベネットは原作に登場していない初出のキャラクターであるにもかかわらず、設定がぼんやりしすぎています。

人間なのにいきなり魔界にいて、その理由も「お宝探しで魔界に来ている」と意味不明。
ピサロとロザリーは大昔にエルフが作った伝説の魔石の力で魔界に来たのに、彼は普通にいます。

こいつがストーリーにおける親友枠なんですが、絆を感じられるシーンがほぼ皆無。
それでいて、後半では信頼し合っているかのような描かれ方。
最後の最後まで、良くわからないキャラクターでした。

UI・UXが悪すぎる

細かい話と思うかもしれないですが、大事なので。

特に気になったところで言うと、配合場所にいるモンスター預かりのおっさん。
モンスターを預けたり、引き出したりするためにいるおっさんなのですが、何故か話しかけると毎回「たくましくなったな」みたいなことを言って、預り所を開いてくれずに会話が終わる。
(多分後半からこうなった気がするので、レベルが上がるとそのセリフが出る?)

で、もう一度話しかけると、やっとモンスターの預り所を開いてくれる。謎すぎ。

それと、モンスターの名前入力周りの話。
モンスターを捕まえるたびに、名前の入力画面が表示されるのですが、名前入力画面を呼び出すのにはラグがあります。 
一つのモンスターを育て続けるゲームシステムじゃないので、大半のプレイヤーは毎回名付けはしないと思います。
なのに、画面呼び出しのラグを毎回経験しないといけない。

「名前を付けますか」→「はい/いいえ」のワンクッションを挟むだけでいいのに。。

他にも色々ありましたが、こんな程度にしておきます。

どうしてほしかったか

ストーリーを重視するなら演出含めてもっとちゃんとしてほしかったですし、そうでないならゲーム部分やシステム部分にもっと力を入れてほしかった。
それこそUIの改善とか、クリア後のやりこみ要素を充実させるとか。

始めにも書いた通り、最後までプレイした感想は「面白かった」ですけど、「ここが良ければもっと面白いのに」と感じることがあまりにも多かったです。

そもそも、私の感じた面白さは「ドラクエモンスターズ」としての面白さなので、今作ならではの面白さはほぼゼロと言っても良いです。

この記事を書くにあたって、昔プレイしていた『テリーのワンダーランド』のことを調べて思い出してみたけど、クリア後にナンバリングのラスボスと戦えるダンジョンがあったり、図書館の情報をもとに????系を作ってみたりと、いろいろなやりこみ要素があったように思います。

せっかくの記念作品なのに25年前の方が面白かったという感想は、あまりに残念。

とはいえ、次回作が出たらまた買ってしまいそう。
その時はこんな気持ちにならないよう、祈っています。

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