【書評】髙崎卓馬『表現の技術』 「表現」について考え直す

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様々な分野を通して活躍するクリエイティブ・ディレクター 髙崎卓馬さんが、自身の経験をもとに、表現の方法論や心構えをまとめた本です。

本の内容に少し触れつつ、私の感じたことを綴っていきます。

タイトル表現の技術
著者髙崎卓馬
出版社中公文庫
初版発行2018年10月25日

どんな内容?

表現の方法論や心構えをまとめた本書。

テレビCMだけでなく映画や小説、舞台にも携わり、Web媒体も見据えて「表現」と向き合う髙崎さんだからこそ説得力のある内容であると感じました。

本書は以下の3つの軸で展開していきます。

人のココロにふれる

人を感動させるためにはどうすればよいか、面白さとはどういうところに現れるかなど、「表現」をする上で意識すべきことをまとめた章です。
この本全体から見ると基礎にあたる内容になっています。

つくり方をつくる

自分がしたい「表現」のために必要なことを考えて方法論化することを主軸に、既存の作品の分析などを通して、プロットの構成について考えます。

発想脳をつくる

「人のココロにふれる」「つくり方をつくる」を通して語られてきた表現の方法論や心構えを踏まえて、より実践的、応用的な考え方を、自身の経験をもとに語り、本書をまとめます。

「表現」とはなにかを改めて考える

予定調和は、表現の敵だ。
すべての手法はそれを壊すためにある。

この本はこんな書き出しで始まります。

私自身、舞台や音楽など曲がりなりにも表現に携わる活動をしてきました。
しかし長くそのフィールドにいると、ただ「こなしている」だけだと痛感することがあります。

より高い表現を目指すのではなく、「こうすればもう少し簡単にできる」といった打算的な思考になってしまうのです。
良いものを作り、届けたいと思う反面、そんな状態に陥ってしまうことがありました。
それは「表現」の本質を理解していなかったからだと、今は思います。

面白いけれどやるのは大変だ。そう思ったら、それこそが今つくるべきものだと思いましょう。

これを読んで、はっとしました。

やるのが大変なものは、他人がなかなか作らないもの、つまり新しいものだから。
それができると、表現は凡庸を抜け出すのだと言います。

表現の使命は、それに触れた人の何かを少しでも変えること。
そのために表現者は、今までにない面白いものを生み出していく。

これが、この本を通して私が受け取ったメッセージです。

「表現」と言葉では良く使うものの、その実態についてはあいまいであった私は、この本を通してその片鱗をこの身に落とし込めたのではないかと感じます。

もちろん、「表現」について深く理解するには膨大な時間がかかりますし、そのすべてを理解することなど到底できないでしょう。
ですが、広大な平原に投げ出され、右も左もわからない状態だった(と今にして思う)自分にとって、この本は最初の道しるべとなってくれたのです。

「表現」について考えることは人類共通の課題

「表現」と聞くと、芸術、芸能に携わる人間にしか関係のないことのように思われるかもしれませんが、実際はそんなことはありません。
月並みな言葉にはなりますが、「人類はみな表現者である」と常々私は思っています。

学生時代に芸術について学んだことで得た考え方が、社会人になって役立つ場面にこれまで多く出会ってきているからです。

芸術や芸能に代表される「表現」の根底にあるのは、当たり前とされていることを疑う視点、言い換えれば新しいものを創造しようとする思考

それはすべての人が持っておくべきものだと、私は考えます。

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