「BIOSHOCK」ストーリー考察 プレイヤーの常識を覆す秀逸な演出

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知る人ぞ知るFPSゲーム『バイオショック』。
ストーリーの考察やメッセージについては今でも様々な場所で語られています。

しかしながら、このゲームはクリアしても正直良くわからない部分が多い…。

ストーリーが難解な上、普通にプレイしたのでは重要な情報が得られないこともあり、物語の全貌が見えづらいんですよね。

というわけで、調べた情報に解説を交えながらバイオショックの秀逸な演出について考察をしていきます。

※この記事はネタバレ満載です。
 ゲームの紹介記事は別で書いているので、是非そちらをご覧ください!

主人公のジャックは何者なのか

ネット界隈で「秀逸な演出」と言われているのは、物語の中盤を過ぎたあたりのところ。
主人公が自分の意志で進んでいたのではなく、敵に操られて動いていたことが分かるシーンです。
この演出について、順番に整理して考えていきます。

まずは主人公ジャックの正体
普通にプレイすればなんとなくわかるのですが、詳細はよくわからない。
そう思った方も多いはず。

というのも、このあたりの話が聞けるログが終盤に固まってるからです。

つまり、物語が盛り上がってきた終盤を勢いに任せて一気に駆け抜けるタイプのゲーマーはごっそり見逃してしまうという罠。

フォンテインの計画

結論から言うと、ジャックはアンドリュー・ライアンを殺すためにフォンテインが作り出した存在です。

ライアンを殺したいと考えたフォンテインですが、ライアンはラプチャーの厳重なセキュリティによって守られており、部外者がたどり着くのは困難です。

そのセキュリティを突破する策としてフォンテインはこう考えました。
「ライアンの遺伝子情報を持っていれば、セキュリティに阻まれることはない」

こうして、ライアンの遺伝子を持った存在を作り出すことを思いつくわけです。
マッドサイエンティストですね。

フォンテインは、ライアンの娼婦を買収することで、彼の遺伝子を持つ受精卵を入手します。

ジャックの誕生

かくしてライアンの遺伝子を持つ子供を手に入れたフォンテイン。
ですが、任務を遂行できるほど成長するのを待つのはさすがに時間がかかりすぎる…。

そこで登場するのがスーチョン博士です。
彼は成長を早めるプラスミドを打つことで、この子供を急速に成長させます。

それが本作の主人公ジャックです。

ライアンを殴り殺すシーンでわかる通り、ジャックは「恐縮だが」と言われるとその後に続く命令に従ってしまうよう、深層心理に埋め込まれています。
しかも、それを自分自身では気づかないようにもされています。

そのまま完全に洗脳することもできそうですけど、ライアンに気づかれるリスクなどを考えてこの形を取ったのだと思われます。

さらに記憶も捏造し、20年ほど普通の人生を送ってきた一般市民として仕立て上げます。

こうして、我々の知るジャックが誕生するのです。

ちなみに冒頭で持っているプレゼントに「 Would you kindly not open until: 63* 2′ N 29* 55′ W 」と書かれていますが、これは飛行機を墜落させてラプチャーに導くための指令と道具が入っていたのだろうと推測できます。「指定された場所にこの爆薬を置け」とか。

何が「秀逸な演出」と言われているか

「ジャックは何者なのか」が明かされるのは、物語中盤のライアンと対峙するシーンです。

「結局のところ、人間と奴隷の違いとはなんだ? 金か権力か?
 いや・・・・・・人間には選択することができるが奴隷は従うのみだ」

このシーン、もちろんストーリー上非常に大きな意味を持つのですが、それだけではないということをここで解説します。

プレイヤーの順応力を逆手に取った伏線の隠匿

ライアンがジャックに「自分を殺す」よう命令し、ジャックがその通りに殴り殺す、というこのシーン。

実は、この衝撃的な展開に説得力を持たせるため、ここまでに多くの伏線が張ってあります。

ただ、この伏線はプレイヤーに悟られないよう巧妙に隠されています。これがポイント。

その伏線とは、例えば以下のようなこと。

  • 拾ったプラスミドの注射器をなんの躊躇いもなく自分に打つ
  • フォンテイン扮するアトラスの言葉に従ってラプチャーを探索する
  • プラスミド用のスロットが身体に用意されている

これらが伏線だと、あなたは気づけましたか?
きっと考えもしなかったはずです。

かくいう僕も、クリアした後に様々な解説サイトを調べてようやく気付かされました。

プレイヤーは、「バイオショック」を「ゲーム」としてプレイしています。
「ゲーム」ですから、アイテムとして入手した注射器をいきなり自分に打ったり、見ず知らずのキャラクターから指示され、その通りに動くことに抵抗はありません。

キノコを取ったマリオが大きくなることに疑問を持たないのと一緒です。

無意識のうちに「そういうゲームなんだな」と思うのです。

バイオショックでは、ゲームプレイヤーなら誰もが持つこの固定観念を逆手に取りました。
意味がないと思われがちな事柄すべてに意味をもたせたのです。

なんの躊躇いもなく自分に注射器を打つのは、使い方を始めから理解しているから
ライアンに言われたとおりにラプチャーを探索するのは、命令に従うように作られているから
プラスミド用のスロットがあるのも、彼がラプチャーで作られた存在だからです。

プレイヤーが意識しないところに伏線を張ることで、プレイヤーは展開を予測する間もなくあのシーンを迎えるのです。

プレイヤーに対するマインドコントロール

このようにして「プレイヤーの意識さえもコントロールした」わけですが、これが実は演出を通してプレイヤーに伝えられています。

それがライアンとの対峙シーン。

このシーンで重要なのは、一人称視点でやり取りが進むこと。
そしてプレイヤーが操作できず、勝手に動いてしまうということです。

プレイヤーは当然、自分が自分の意思で考え、選択しながら、ゲームを進めていると思っています。

しかしこのシーンでは、プレイヤーは一切操作できません。

ライアンから「自分を殺せ」と言われたジャックはプレイヤーの手を離れて勝手に動き出し、ライアンを殴り殺します。

ムービーに切り替わるでもなく、自分が今まで操作していたときと視点は同じままに、です。

これこそが、「プレイヤーは自分の意思で進んでいたのではなく、ただこのゲームに誘導された通りに動いていただけ」だという事実をプレイヤーに示しているのです。

常識に囚われている私達

いかがでしたでしょうか。
調べた情報を整理してまとめただけですが、解説・考察は以上です。

このバイオショックというゲームに込められたメッセージに、少なくとも僕は大きな衝撃を受けました。

自分の常識が崩れると同時に、ある種の恐怖を感じたのです。「不自然」であることを「自然」だと感じてしまうことに。

これは恐らく、ゲームに限った話ではありません。
日々生活している中で「自分は固定観念に囚われていない」と言い切れる人はいるでしょうか。おそらくほとんどいないでしょう。
僕自身、「これはこういうものだから」と思考停止してしまう場面が、少なからずあるように思います。
そして厄介なのは、自分ではなかなかそれに気づけないということです。

制作者がどのような思いでこういったメッセージを込めたのかはわかりませんが、現代社会を生きる我々への警鐘だったのかもしれません。

非常に奥深いストーリーでした…。

 

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